きのうは鳥になっていた。
窓の外に広がるクリーム色の夜に向かって。
たぶんそこになにかを届けにいったまま、
わたしの身体は眠り続けているんだろう。
生まれてくることを忘れた木たちといっしょに、
そこには幻の家族がいて、
しずかに髪を洗い、
とてもふつうの食事をして、
だれかのために泣いたり笑ったりするらしい。
ああ、また砂が降ってくる。あのときから世界は、なにもかも汚れて、すすけてしまった。いつでも砂に覆われて。この砂はいったいどこから降ってくるんだ
ろう。なにがこの砂を作っているんだろう。きっとなにかが少しずつ、砂にすりかわっていってるんだ。そう、あの、地の果てに見えるビル、あの向こうには
もうなにもないんじゃないか、っていつも夢想してたんだよ。もちろん知ってる、ほんとは、その先にもなにもかもずっとつながってるってことは。でも、だ
からといってそれがなんだろう? 今ここでさわることができるこの壁も机も皿も、ほんとうは幻の粒の集まりかもしれないじゃないか。僕たちがここからし
ずかに消えていったとき、それらはさらさらと砂になってくずれていくだろう。ねえ、だから君も、もうおやすみ。僕はいないんだ。君も、僕も、きっとこの
くずれていく砂が見ている幻のようなものなんだ。もう眠ろう、そうしたら眠りのなかで、もう一度会うことができるかもしれない。ああ、砂、この砂は、
いったいいつやむんだろう。
煙がのぼっていく。
おぼえていますか、
汚染された草たちがいっせいにその葉をひるがえしたこと。
立ち枯れていく世界の柱からあいされていたこと。
そう、鳥は鳥であるために、
影にすりかわっていくのだ。
ただそれが存在しないということだけをのぞいて、
すべてはおだやかに暮れていく。
さらさらと。
わたしは細い嘴で
埋められなかった木の実をひとつひとつついばみ、
幻の木々のあいまに
虹色の水がはずむのを見る。
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